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男取物語

雑記

今は昔、竹取のおばばといふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづの男を探しけり。名をば、徳川となむ言ひける。この女、いとうつくしうてゐたり。

 

世界の男ども、貴なるも卑しきも、いかでこの外銀の女を得てしがな、見てしがなと、音に聞きめでて惑ふ。そのあたりの垣にも、家の門にも、をる人だにたはやすく見るまじきものを、夜は安きいも寝ず、闇の夜にいでて、穴をくじり、かいばみ惑ひ合へり。されど姫は170を超えない人は男にあらずとの給はりて、男共傷つきてようよう去りにけり。気づけば辺りに男おらず、姫困りにけり。

 

ある日暮るるほど、国司の遣ひとして山に郡司来たり。郡司この姫を見て惚れにけり。背竹は低けれど、姫なぜかこの男をよしと思ふ。かくしてこの二人恋に落ちにけり。

 

かやうに、御心を互ひに慰めたまふほどに、半年ばかりありて、春の初めより、郡司、月のおもしろくいでたるを見て、常よりももの思ひたるさまなり。郡司のいはく、「月の都の人にて、父母あり。かた時の間とて、かの国よりまうで来しかども、かくこの国にはあまたの年を経ぬるになむありける。かの国の父母のことも覚えず、ここには、かく久しく遊び聞こえて、ならひ奉れり。いみじからむ心地もせず。悲しくのみある。されどおのが心ならず、まかりなむとする」と言ひて、もろともにいみじう泣く。使はるる人々も、年ごろならひて、立ち別れなむことを、心ばへなどあてやかにうつくしかりつることを見慣らひて、恋しからむことの耐へがたく、湯水飲まれず、同じ心に嘆かしがりけり。

 

 

 

郡司、月に帰りにけり。